四人が無事学園に帰り着いた時にはすっかり夜遅くなっており、誰もいないモストロラウンジのキッチンで適当に料理を作って少し遅い夕食を食べ終えた。
「じゃあ貸して貰ったウェアは今度洗って返すよ」
「楽しかった。誘ってくれてありがとうジェイド」
「ええ、また行きましょうね二人とも。今度はフロイドも一緒に」
「うん、気が向いたらね」
「さて、消灯時間まであまり時間がありません。お喋りはこの辺りでそろそろ部屋に戻りましょう」
夕食を食べ終えて食器を片付け終えてからも、しばらく今日の出来事について雑談を続けていたが、消灯時間が迫っている事に気づいたアズールの言葉によってお開きとなった。
「そうだね。おやすみアズール、ジェイド」
「じゃあな、おやすみ先輩たち」
「ええ。おやすみなさいスレイドさん、バイトさん」
「おやすみなさい」
部屋の方向がそれぞれ違うので、四人は寮の廊下の途中で別れた。
そして数日後、運動部のキャンプから戻ってきたバルガスが、今度は文化部もキャンプに連れて行く事になり、ジェイドが誘わずとも一同はまた山へ向かう事になるのだった。
「アズール、気味が悪い程のにやけ顔が抑え切れていませんよ」
後輩二人と別れた後、ジェイドがいつものようにアズールへ若干毒のある言葉を放つも、今にも鼻歌でも歌い出しそうな程機嫌のいい彼は、全く気にした様子も無く採取した花を入れた容器を見つめては顔をにやけさせていた。
「今の僕は機嫌がいいので、それくらいの嫌味は水に流してあげましょう。ふふふ、想定外だらけの一日でしたが、滅多に手に入らない希少な素材をタダで手に入れられただけで十分なお釣りが来ます!あの二人とあの蝶には感謝しな、いと……」
「どうしました?アズール。慣れない山登りで疲れましたか?」
ジェイドが急に黙り込んだアズールを見下ろすと、彼はさっきまでのイキイキとした様子とは打って変わって、難しい顔をしていた。
心なしか顔色が悪く、冷や汗も掻いているので具合が悪いようにも見えた。
「……ジェイド」
「はい?」
「僕の記憶が正しいか確認して欲しいのですが、確かあの蝶は生き物には寄りつかない筈ですよね」
「ええ。合っています」
「生き物……つまり『生きているもの』には寄り付かない筈……」
「ええ」
「……では、どうしてあの二人には寄り付いていたんでしょう」
「「…………」」
花畑の真ん中を一人フラフラと歩くスレイド、そして「生きものには寄り付かない筈」の蝶にじゃれつく二人、そして蝶に導かれて見つかった白骨死体。
脳裏に浮かんだいくつもの光景がみるみる異常な物に思えてきて、生存本能から来る恐怖から二人の背中に悪寒が走った。
「知らない方がいい事もあるのかもしれませんね」
「そうですね」
二人が立ち止まって後ろを振り返ると、後輩達が今日の事を楽しそうに話しながら部屋へ戻って行く姿が小さく見えた。
2022年9月22日 Pixivにて投稿

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