後編一にて テンガン山を登っている途中でクダリが負傷する
没理由:クダリが負傷するシーンは後編二にもあるので、ここでも負傷シーンを入れると、くどいと思ったから。
「!」
杖が転がる音と同時に、突然クダリがコウキの身体をを覆うように抱きつき、次の瞬間無数の黒い影が二人を襲った。
影達は相当気が立っているらしく、怒りの鳴き声と風を切る音を立てて二人の周りを飛び交う。
シャンデラがシャドーボールを放つと、影達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「今の……ズバットの群れか……ありがとうシャンデラ、おかげで助かったよ」
不意に肩にずっしりとした重みを感じて目を向けると、クダリがコウキの肩に頭を埋めて、完全に身を預けていた。
「クダリさん?」
「…………」
「あっ!?」
俯いたまま何も答えないクダリは、そのまま頭がずるずるとずり落ちていき、そのままゆっくりと地面に頽れていく。
気づいたシャンデラが咄嗟にサイコキネシスを掛けて、やや遅れてコウキも彼の腕と腹を抱え込むように支えたので、辛うじてクダリは顔から地面に倒れ込む事は免れた。
「……ふ……、っうう……」
コウキ達の助けを借りて地面に座り込んだクダリは、身体を折り曲げるように上半身を捻って、右足のふくらはぎを左手でスラックスにシワが出来る程強く押さえた。
その手の下からはじわじわと赤が広がり、鉄の匂いがコウキ達の鼻を掠める。
きつく目を閉じて眉間にシワを寄せ、押し殺すような声で呻くその表情を見るに、かなり強い痛みを感じているらしく、顳顬や首元には僅かに脂汗が浮かんでいた。
クダリの負傷に気づいたシャンデラが、慌てた様子でクダリのショルダーバッグに向かって何かを呼び掛けると、バッグの中に入っていたモンスターボールから、デンチュラが出て来た。
シャンデラから話を聞いたデンチュラは、クダリのコートに潜り込むと、前足で器用にバッグの蓋を開けて中身を漁り出し、人間用の救急セットのポーチをみつけてコウキに差し出した。
「ありがとうデンチュラ!クダリさんすぐ手当しますね、そこの壁にもたれて座れますか?」
クダリは無言で頷くと、コウキの助けを借りながら、半ば這うように岩に凭れ掛かった。
「裾、上げますよ」
「っあ゛……!!」
コウキがクダリのスラックスの裾を一思いに捲り上げると、布の繊維と傷口が擦れる痛みに堪えきれず、彼は苦悶の声を漏らして全身を強張らせた。
クダリの不自由な右足を支える下肢装具。
その金属の支柱を固定する為に必要な、脛からふくらはぎをぐるりと回る革製のベルトがスッパリと切れていて、その下から大きく斜めに足を横切る切り傷からは、鮮やかな赤い血が溢れている。
「あの羽音に混じってた風みたいな音……ズバットのエアカッターの音だったんだ」

コメント