それから休憩の後でも、コウキは茫然自失に近い状態から回復できなかったので、その後のシロナとの会話は、ほとんどクダリに任せきりになってしまった。
そしてポケモン図鑑に書かれている文字の筆跡と、ヒカリの筆跡を照らし合わせる参考になるだろうという理由でヒカリのレポートを。
そして解読をお願いしようと思っていた、クダリのスマホにある手記の画像データと、手記の絵の一つにあった、コウキが預かっている不思議な形の笛をシロナに託し、二人は再びポケモンセンターで一晩、彼女の調査結果を待つ事になった。
今晩泊まる部屋で、床に座ってイワパレスに凭れ掛かり、ギギギアルとアイアントの金属の身体を磨いていたクダリは、自分の作業をしながら、真向いのベッドでカブトプスの刃の状態をチェックしているコウキの様子を伺っていた。
いつも部屋が静かになりすぎないように、積極的に話し掛けてくれるコウキだが、あのポケモン図鑑を見てから言葉少なになり、思いつめた表情をしている。
時折クダリと目が合っても気まずそうに目を伏せ、何も話さずにポケモン達の世話をする為に機械的に手を動かしているだけ。
コウキの手持ちのポケモン達も、パートナーの異変に気付いているらしく、クダリの顔と交互に見つめたり、自分の顔を彼の身体に押し付けて構ってもらおうとしている子もいる。
会話するには物音を立てて自分に注意を向けて、スマホの画面や手帳を見て貰う必要があるので、クダリが自分からコウキに話し掛けるのは難しく、部屋にはぎこちない沈黙が横たわっていた。
「コー、キ」
手持ちのポケモン達の手入れを一通り終わらせたコウキは、無言で部屋を出て行こうとしたので、クダリは思わず名前を呼んで引き止めた。
「すみません。……ちょっと、散歩に行ってきます。ボクのポケモン達、外に出ないように見ていてください」
名前を呼ばれたコウキは、ドアの前で一度立ち止まったが、静かな声でそれだけ言い残すと、そのまま振り返る事なく部屋を出て行った。
置いていかれたクダリは、しばらくそのまま閉じられたドアを見つめていたが、すぐに床を叩いてシャンデラを呼んだ。

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